【医師監修】夏にインフルエンザが流行!? その理由やインフルエンザ対策とは?

【医師監修】夏にインフルエンザが流行!? その理由やインフルエンザ対策とは?

2019年は猛暑が続く9月にも関わらずインフルエンザが流行。冬に流行するイメージが強いため、このニュースにはびっくりされた方も多いのではないでしょうか。ここでは夏にインフルエンザが流行した要因や、年中有効なインフルエンザの対策、インフルエンザワクチンの効果についてご紹介します。

インフルエンザで9月に学級閉鎖!?

インフルエンザといえば冬に流行するイメージがありますが、2019年は9月より学級閉鎖が続出する地域もあり、暑い時期にも関わらずインフルエンザが猛威を振るいました。なぜ夏にインフルエンザが流行したのでしょうか。詳しくご紹介していきます。

夏休みの海外旅行やワールドカップでインフルエンザが拡大

夏にインフルエンザが流行した原因の一つに、海外旅行やワールドカップなどで例年以上に外国との交流が盛んであったことが挙げられます。飛行機など人が密集する空間では、インフルエンザの感染リスクが高まります。

さらに感染した人が「夏にインフルエンザにかかるはずがない」と病院に行かなかったり、検査をしないまま会社や学校に行ったりしたことで、感染が広がっていったのではないかと考えられています。

南半球では夏にインフルエンザが流行

日本では11月〜3月頃にインフルエンザが流行しますが、南半球では4月〜9月頃に流行します。このことから、インフルエンザは1年中世界のどこかで流行していることになります。

外国との交流が盛んになると、インフルエンザにかかった人が日本へ旅行にきたり、外国でインフルエンザにかかってしまった人が帰国することで、インフルエンザが日本に持ちこまれる機会が増えると考えられています。

日本ではインフルエンザが冬に流行するのはなぜ?

インフルエンザは咳やくしゃみなどで放出される、唾液や飛沫によって感染します。インフルエンザウイルスを含んだ飛沫は、冬の乾燥した環境下では空気中に浮遊しやすくなります。

またインフルエンザウイルスは、目・鼻・口などの粘膜から体に侵入、喉を通り上気道粘膜上で増殖します。インフルエンザウイルスの増殖スピードは早く、8時間後に100個以上、16時間後には1万個以上、そして24時間後には100万個以上と言われています。冬になると乾燥により喉粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。

冬は暖房で乾燥しやすく、閉め切った部屋で換気が不十分になるなどインフルエンザが流行しやすい環境になってしまうのです。

こんな症状があったら病院へ

風邪かと思って病院に行ったら、インフルエンザだったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

インフルエンザの薬はウイルスを退治する薬ではなく、増えるのを抑えるもの。出来るだけ早く使った方が効果的であり、早めに受診することが重要です。とは言っても発症後12時間以内の検査では陽性と出にくいことも。最も陽性と出やすいのは発症後24~48時間と言われています。

ここでは、知っておきたいインフルエンザの症状や特徴、病院での検査法についてご紹介します。

風邪との違いは全身に症状があるかどうか

風邪は喉の痛み・鼻水・咳など体の一部に症状が出ることが多く、全身症状はあまり見られません。熱もインフルエンザほど高くないのが特徴です。

一方でインフルエンザは感染すると38度以上の高熱が出て、関節痛や筋肉痛などの全身症状が現れることが多く、そのような症状が出たらインフルエンザが疑われます。

高齢者や呼吸器・心臓などに持病をお持ちの方は、インフルエンザにかかると重症化したり、持病が悪化しやすく死に至る原因となる場合があるため注意が必要です。また小児・幼児は急性脳症による死亡や、熱性けいれんを引き起こす可能性がありますので、インフルエンザが疑わしい場合は病院で検査をして、療養中もよく様子を見ておく必要があります。

インフルエンザの種類と特徴

インフルエンザウイルスの種類には大きく分けて「A型・B型・C型」があり、流行の原因となるのはA型とB型であると言われています。

A型のインフルエンザウイルスは100種類以上あり、変異を起こしやすいのが特徴です。通常は一度感染したインフルエンザには抗体ができ、再び体に入っても抗体が感染を防いでくれますが、変異を起こしたインフルエンザは体が別物と判断し、感染してしまうことがあります。そのためA型インフルエンザにかかった後、同じシーズンにも関わらず、再びA型インフルエンザにかかることもあるのです。

B型インフルエンザは変異を起こしにくく、1度感染すると再び感染しにくいのが特徴ですが、同じシーズンでA型・B型の両方にかかることもあります。

病院ではすぐに結果が判明

インフルエンザかな?と思ったらできるだけ早く内科の病院を受診しましょう。病院に行く際はマスクをつけて他の人にうつさないようにし、自分自身も他の細菌やウイルスなどを貰わないようにします。

インフルエンザの疑いがある場合には「迅速抗原検査」と呼ばれる検査が行われます。10分〜15分程度で完了する検査で、鼻や喉の粘膜を長い綿棒でこすり、付着した組織の中にインフルエンザウイルスがあるかどうかを検査し、陽性か陰性かの判定を出します。

陽性の判定が出たら、インフルエンザの増殖を抑える薬が処方されます。この薬を早い段階で飲むことで、辛い症状が短期間で済んだり、悪化を抑えたりすることができます。症状出現後48時間以内に服用すると効果的と言われています。先にもお伝えしている通り、インフルエンザの検査は発症後12時間以内だと陽性と出ない場合もあるため、この点は考慮しておきましょう。

インフルエンザにかからないためには

インフルエンザの感染経路は咳やくしゃみによる飛沫感染・接触感染ですので、対策には、通勤電車などの人混みではマスクをつけ、帰宅時や食事の前などこまめに手洗いうがいを行いましょう。そして一番の対策法は、予防接種を受けることです。ここではインフルエンザの予防接種について詳しくご紹介します。

インフルエンザのワクチンとは

インフルエンザワクチンとは、インフルエンザにかかりにくく、重症化を防ぐためにつくられたものです。特に小さなお子様や高齢者の方と暮らすご家庭などでは、インフルエンザワクチンの予防接種をして、インフルエンザ対策に努めましょう。

ワクチンを接種すると、あらかじめインフルエンザに対する抗体が体に作られ、感染しにくくなります。ワクチンは感染力を失わせたインフルエンザウイルスですので、ワクチンを接種することが原因でインフルエンザに感染することはありません。

ワクチンは毎年違う

インフルエンザは常に変化しているため、毎年流行する種類も異なります。そのため、その年に流行するであろうインフルエンザの種類を予想し、毎年異なるインフルエンザワクチンが製造されています。

去年インフルエンザにかかった方やワクチンを接種した方も、今年インフルエンザにかかる可能性がありますので、毎年インフルエンザの予防接種を受けることをおすすめします。

インフルエンザワクチンは、医療機関や健診施設など非常に多くの施設で接種可能です。仕事や学校などで時間のない方も、お近くの医療機関などで受診・接種することができます。

ワクチンは早めの接種を

インフルエンザワクチンを接種してから、効果を発揮するまでには約2週間程度かかるといわれています。毎年10月頃からインフルエンザワクチンの予防接種がスタートしていきますので、遅くとも12月の中頃までには接種を終えることが望ましいでしょう。

また重症化の予防に有効な免疫レベルの持続期間はおよそ5ヵ月間とされており、成人では1シーズンで1回予防接種を受ければ十分とされています。

流行期間はあくまで予想なので、早めにインフルエンザ予防接種を受けて冬に備えましょう。

結局夏シーズンのインフルエンザ感染は防げないの?

10月頃から予防接種がスタートするということは、夏にインフルエンザが流行した場合、感染は防げないのでしょうか。ここからは一年を通してできるインフルエンザ対策をご紹介します。

インフルエンザが夏よりも冬に流行する理由は、空気が乾燥していることにより、ウイルスが空気中に滞在しやすくなるためです。夏は湿度が高いので空気を漂う飛沫感染は減り、ウイルスの活発性も低下します。そのため夏にインフルエンザが流行っても、冬ほど大流行にならず重症化することも少ないため、夏のインフルエンザは心配しすぎることはありません。

ただし、くしゃみをした後の手や吊革などの、物についたウイルスは残存し、そこから接触感染が起こります。夏は手洗いやうがいに対する意識が薄れがちですが、外出後は手洗いやうがいを心がけるようにしましょう。

また飛行機の中や冷房の効いた室内では夏でも乾燥しているため、乾燥している環境ではマスクをつけることで加湿の役割を果たしてくれます。また体力が落ちないように偏食は避けて睡眠をしっかりと取り規則正しい生活を送ることが重要です。

規則正しい生活と環境づくりでインフルエンザ対策を

インフルエンザは予防接種やマスク着用、手洗いうがい、人混みを避けるなどの対策をとることで、感染のリスクを少しでも減らすことが重要です。

またどんなに対策をしていても、不規則な生活では体力や免疫力が落ち、インフルエンザにかかりやすくなってしまいます。インフルエンザに負けない元気な体で冬を乗り切りましょう!

監修:赤坂一ツ木通りクリニック 大橋成孝先生

専門とする科目:循環器内科
資格:医師免許、循環器専門医
プロフィール:
慶應義塾大学医学部を卒業後、呼吸循環器内科教室入局。伊勢原協同病院、国際医療福祉大学三田病院で准教授として勤務し、令和元年より赤坂一ツ木通りクリニックで院長として勤務しています。

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