大人も要注意!こどもの三大夏風邪の一つ、「手足口病」とは

大人も要注意!こどもの三大夏風邪の一つ、「手足口病」とは

口の中や手足に発疹ができる、手足口病(てあしくちびょう)。春先から7月下旬をピークに乳幼児を中心に感染し、ヘルパンギーナ、プール熱(アデノウイルス)と共に“こどもの3大夏風邪”としても知られています。実はこの手足口病はまれに大人にも感染することがあるんです!やっかいな手足口病の症状や感染経路、感染対策について小児科の先生にくわしく伺いました。

今回お話をしてくださったのは……

今回、タマケアLab.編集部の取材に協力いただいたのは、地下鉄、麻布十番駅近くに2018年9月に開業した「サニーガーデンこどもクリニック」。院内は優しい色合いでまとめられた居心地の良い空間です。

お話を聞いたのは、この「サニーガーデンこどもクリニック」の院長、首里京子先生。母親目線でのきめ細やかな診療が好評です。

首里京子先生
東京女子医科大学卒業。 長年、新生児医療(NICU)に従事してきた経験から、「こどもにとって一番いい治療やサポートは何か」を常に考え、患者ファーストで診療にあたっている。

手足口病からは逃げられない?

手足口病とはどんな病気なのでしょうか。

手足口病はこどもが夏に感染しやすい、熱と発疹・水疱(もしくは水ぶくれ)を伴うウイルス感染症の一つです。熱は38度から40度くらいまで上がりますが、初めてかかったこどもは熱が高くなりやすいですね。ただ、熱が出ない場合もありますし、熱の高さと重症度はそれほど関係しません。

発疹にはどのような特徴がありますか。

発疹は発熱とほぼ同時期に現れることが多く、手、足、口の中に出てくるので手足口病と名付けられています。足全体や口の周りから肩にかけて、あるいはお尻の周りにできることもあります。発疹は単に赤いだけではなく、水疱のように内にお水がたまっているような状態で、治りかけると、カサブタになる人もいます。

発疹による痒(かゆ)みや痛みはあるのでしょうか。

痒みはある人とない人がいますね。手足にできた発疹なら痛みはありませんが、口の中の発疹は痛みを伴い、食欲不振で脱水症状になる危険もあるので注意が必要です。

手足口病は乳幼児から5歳までのこどもの発症が多いと言われています。何故なのでしょうか。

患者さんのほとんどは5歳未満のこどもで80%を占めると言われています。小さなこどもは免疫を持っていないのでウイルスに対して無防備ですから、感染すると発病して強い症状が出てしまいやすいのです。しかし、ウイルスに何回か感染するとその度に免疫を獲得していくので、5歳以上になると感染しても強い症状は出にくいと言われています。また、手足口病は、ウイルスに感染しても症状が出ないことがあり、「手足口病になったことがない」という大人でも、こどもの頃、知らない間に感染して免疫を獲得している人も多いですね。

免疫のない小さなこどもにとって手足口病は避けて通れない病気なんですね……!それでは、免疫がある大人でも手足口病にかかってしまうのは何故でしょうか。

他のウイルス感染症についても言えることですが、大人になってしばらくウイルス感染していないと抗体が減って抵抗力が弱くなっていることがあります。その場合、お子さんが持ち帰ってきたウイルスに感染してしまう親御さんもいますね。手足口病を引き起こすウイルスは高温多湿でも人への感染を起こすので、夏バテや疲れなどで体力が落ちている方、糖尿病や心臓病など基礎疾患のある方は大人でも注意が必要です。ただし、大人で手足口病にかかる人は決して多くはないんですよ。

手足口病には特効薬もワクチンもない!

手足口病は三大夏風邪の一つだと言われていますよね。

はい。夏に流行する感染症は、「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱(アデノウイルス)」が三大夏風邪と言われていて、その年によって流行の波があります。

手足口病の原因となるウイルスにはどんなものがあるのでしょうか。

手足口病の原因ウイルスとしてコクサッキーウイルスとエンテロウイルスがよく知られています。ただ、それぞれのウイルスの中にたくさんの型、種類があり、またウイルスが変異して新しい型が現れることもあるので、一つのウイルスに感染して治っても、別の型のウイルスが原因で何度も手足口病にかかってしまうことがあります。感染するウイルスの型によって症状が異なることもあるため、継続的な予防が必要です。

繰り返し感染してしまうことがあるのですね!ちなみに、手足口病にかかってしまった場合、検査で原因ウイルスを特定することはできるのでしょうか。

手足口病そのものはインフルエンザのように重篤化する恐れの強い感染病ではないので、患者さんに抗原検査をしてウイルスを特定することはしません。

手足口病の原因ウイルスに対するワクチンはあるのでしょうか。

手足口病の原因となるウイルスに対するワクチン、特効薬はありません。エンテロウイルス群という広い範囲では唯一、ポリオウイルスに関してはワクチンがあります。ポリオウイルスは感染すると麻痺を起こし、死亡に至ることもあるウイルスなのでワクチンが開発されました。

なるほど。特効薬はないので、何度もかかって免疫を獲得しウイルスに強くなっていくしかないんですね。

そうですね。でも、一般的にはよくある風邪の原因ウイルスも、変化した新型ウイルスが生まれてしまうと重篤化する恐れがあります。

保育園、幼稚園に通い始めたら注意が必要

手足口病はどのような感染経路で発症するのでしょうか。

手足口病のウイルスはさまざまな経路で口や鼻から身体の中に侵入します。その侵入経路は大きく分けると二つが考えられます。一つは手指やもの、食品などについたウイルスが身体内に入る「接触感染」で、これには食品などについたウイルスが侵入する経口感染や、便の中のウイルスによる糞口感染などがあります。もう一つは咳やくしゃみなどに含まれるウイルスを吸い込む「飛沫感染」です。

5歳未満のこどもがかかりやすいということですが、具体的にどのような状況で感染してしまうのでしょうか。

幼稚園、保育園などでお子さん同士の距離が近くなって感染するケースが一番多いですね。

ウイルスは水を飲んで胃に落とせば胃酸で死んでしまうという話を聞いたことがあります。手足口病のウイルスは胃酸では死なないのでしょうか。

100%死ぬということはありません。それはどんなウイルスにも言えることです。そのため、胃酸で死ななかったウイルスが生きたまま便と一緒に出てきて、そこから感染してしまうことが多々あるのです。

発疹が出たら迷わずお医者さんに診てもらおう

初めてのお子さんで、まだ手足口病を経験したことのない保護者向けに、手足口病が疑われる際の対処についていくつか伺いました。

Q1.口の中の発疹を口内炎だと思ってしまうこともありませんか?

A1.口内炎の症状に似ているかもしれませんが、手足口病は発疹の出方が特徴的なので、まずは受診して。

口内炎の症状に似ているかもしれませんが、手足口病は全身のウイルス感染症なので、単なる口内炎にとどまりません。発疹が出てきたらまず受診する事をおすすめします。手足口病の発疹は医師には分かりやすい感染病です。ですから、発疹が出てきたらまず医者にかかっていただくのがいいと思います。ご自分で判断しない方が賢明です。小児科と皮膚科どちらに行くか迷った場合、高熱が出ている場合は小児科がいいと思います。手足口病は接触感染で人にうつりますから、幼稚園や保育園に通っているお子さんの発症が疑われたら、集団感染を防ぐためにも早めに医師の診断を受けることが大切です。

Q2.お子さんやご自身に手足口病が疑われた場合、院内感染を防ぐためにまずは医者に電話で相談した方がいいのでしょうか。

A2.マスクをして受診してOK。

手足口病は基本的には飛沫・接触感染ですので、マスクと手指消毒をお願いしています。早めに受診していただいて大丈夫です。飛沫感染を防ぐためにマスクは着用して行かれた方がいいでしょう。

Q3.お医者さんはどのような対応をしてくださるのでしょうか。

A3.症状を和らげる対処療法になります。

手足口病に特効薬はないので、症状を和らげる対症療法になります。熱が高ければ解熱剤、喉が痛ければ炎症を抑える薬、炎症のあと、痰が絡んでくる場合は痰切り剤を処方します。発疹に関しては保湿ケアを続けていただくことになります。

Q4.口の中に発疹ができると痛くて食事ができないこどももいます。どのように栄養を摂ればいいのでしょうか。

A4.本人が食べられるもの中心に刺激の少ない常温のものを。

うどんやゼリーなど、喉越しが良いもの、柔らかいものを勧めていますが、お子さんには「食べられるものなら何でもいいよ」と言いますね。酸っぱい、辛いなど刺激が強いもの、柑橘類などしみるものは避けた方がいいですね。熱いもの、冷たいものよりは常温の食事がいいと思います。

Q5.お子さんが手足口病にかかったら、幼稚園や保育園は何日くらい休ませるべきでしょうか。

A5.通っている施設のルールに従えばOK。

自宅待機の期間が定められている病気ではないので、熱が下がって口の中の発疹が治り普段通りの食事が摂れるようになれば通っても大丈夫です。教育機関によっては、出席停止となる感染症に含まれていることもあるので学校や幼稚園、保育園に確認しましょう。風邪によるお休みと同じだと考え、家ではできるだけ安静に過ごすようにしてください。

こどもから大人に感染することも

お子さんがかかった場合、ご家族が感染しないために注意することはありますか。

手足口病は、オムツ替えの時に赤ちゃんから大人にうつってしまうことも…

空気感染でうつるウイルスではないので家庭で同じ空間にいるだけではうつりません。でも、咳やくしゃみによる飛沫感染の可能性はあるのでマスクは着用してください。飛沫感染の潜伏期間は1週間くらいと言われています。接触感染はこまめな手洗いやアルコール消毒で対応できます。ドアノブも拭きましょう。食事は予め食べる人数分の皿に取り分けてテーブルに並べた方がいいですね。
特に注意して欲しいのはオムツ交換のときです。赤ちゃんが手足口病にかかった場合、ウイルスは3週間くらい便と共に排泄されると言われています。ですから、オムツ替えの時に赤ちゃんから大人にうつってしまうこともあります。症状が治った後でもオムツ交換のときはしばらくビニール手袋をした方が安心ですし、終わった後は必ず手洗い、もしくはアルコール消毒をしてください。

大人の方が手足口病にかかったら何科を受診すればいいでしょうか。

内科でいいと思います。私の知り合いでお子さんから手足口病に感染したお母さんがいますが、高熱と手足の痺れが続き、三日三晩動けなかったそうです。でも解熱剤を飲んで安静にしていることしかできなかったそうです。高熱がなく発疹が気になるようなら皮膚科でもいいと思います。

先生のクリニックには手足口病の患者さんが1日に何名くらい受診されるのでしょうか。

昨年の夏は手足口病が流行したので、20名くらいのお子さんが受診された日もありました。幼稚園、保育園で感染したケースが多いようです。

首里先生が院長を務めるサニーガーデンこどもクリニックの診察室2・処置室。授乳室も兼ねるなど、母親目線の工夫が光る

手足口病は過度に恐れず、冷静な対処を

小さなこどもにとって手足口病は避けて通れない道。感染してもウイルスと戦って免疫を獲得し強くなっていくんですね。だから、ご両親も冷静に対処することが求められます。そして、お子さんから感染しないために、食事やオムツ交換にはくれぐれも注意してください。
首里先生、ありがとうございました。

※昨今の事情を考慮し電話にてインタビューを行いました

サニーガーデンこどもクリニック

〒106-0045 東京都港区麻布十番2丁目18-8 ABAアサミビル6階
TEL : 03-6722-6623

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