これからやってくる手荒れの季節!知っておきたい手荒れの正しい対処法や、ハンドケアとコロナウイルス感染対策を両立する方法とは?
今回お話をしてくださったのは…
タマケアLab.編集部が伺ったのは、JR吉祥寺駅から徒歩7分の距離にある「吉祥寺まなみ皮フ科」。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医資格をもつ女性医師が皮膚の悩みや、美容にまつわる悩みも診療してくれます。お話を伺った葉山愛弥院長は吉祥寺の出身で、大学病院に長年勤務した経験と実績を元に、地域のかかりつけ医として活躍されています。
葉山愛弥 先生
日本大学医学部医学科卒業、東京女子医科大学病院皮膚科にて、助教、副病棟長、皮膚病理組織チーフ等、多くの臨床経験を積むとともに、国内外の学会、論文作成を行なう。平成31年2月に吉祥寺まなみ皮フ科を開院。日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医 厚生省認定 臨床研修指導医講習会修了
手荒れの原因や症状はさまざま
「手荒れ」といっても「あかぎれ」「手湿疹」などさまざまな種類があると思います。代表的な手荒れの症状を教えていただけますか?
「手湿疹」とは、手のかさつき、赤み、亀裂、水膨れ、痒みなど、手にできる皮膚の炎症の総称です。
手湿疹は、使う頻度の高い親指、人差し指、中指の順番で悪化していくことも多く、日本ではは「進行性指掌角皮症(しんこうせいししょうかくひしょう)」と呼ぶこともあります。
また、春夏に患者さんが多くなるのが指や手のひら、足の裏に、かゆみを伴う水膨れが出現する「異汗性湿疹(いかんせいしっしん)」です。人間の手のひらは汗の腺は多いのですが、毛穴が無いので、汗が溜まって汗疱(かんぽう)という水膨れができやすいんです。汗がそのまま吸収されれば、その後皮がむけるだけで収まりますが、炎症が起きてしまうと赤みや紅斑を生じて異汗性湿疹になります。
さらに、乾燥で手を保護する皮脂膜が薄くなりがちな冬場には、痒みで掻きむしって皮膚表皮が欠損する糜爛(びらん)や亀裂性湿疹(きれつせいしっしん)という、いわゆるアカギレが多く見受けられます。
どんな方が手湿疹を起こしやすいのでしょうか?
水仕事や、薬品に触れる機会が多い方は手湿疹を起こしやすいですね。
例えば、主婦の方、美容師さん、花屋さん、飲食業に携わる方などです。銀行で紙幣を触る時間が多い方、宅配で段ボールなどを頻回に触る方、パソコンを長時間打ち続ける方なども、手が乾燥しやすく、刺激を常に受けるため、手荒れの症状が出やすいと言えます。手の皮膚が刺激を受け続けるような仕事をしていると、バリア機能が壊れて肌荒れを起こしやすくなるんですね。
さらに、痒みに耐えられず掻いてしまうことでバリア機能がさらに破壊され、そこにまた洗剤や摩擦などの刺激が加わるという悪循環に陥ってしまうんです。また、アレルギー素因をお持ちの方は特に刺激を受けやすい状態といえます。
一時的な手荒れだと思っていたけれど、実は違う病気だったということはありますか。
皮膚に赤い発疹ができ、白く厚い角質に覆われる尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)や、膿が溜まる掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の方もいます。いわゆる霜焼けや、手の水虫である手白癬(てはくせん)の方もまれにいらっしゃいます。
一般的には、水虫の原因であるカビは付着しても、およそ24時間以内に洗い流せば問題ないので、手白癬を過剰に心配する必要はありません。ですが、ステロイドを使っての湿疹治療中は、ステロイドが肌の免疫力を弱め、通常より早く手白癬が出てしまう可能性もあるので注意が必要です。
皮膚科の中でも膠原病を専門としている私としては、膠原病に伴うメカニクスハンド、凍瘡状狼瘡(とうそうじょうろうそう)も鑑別として診療に当たっております。
他にも、皮膚病にはさまざまな原因と症状、そして正しい対処療法がありますから、長引くようなら皮膚科を受診した方がいいですね。
摩擦や刺激に注意!手荒れの正しい治療・対処法
手湿疹の治療とはどんなことをするのですか?
一般的に湿疹は炎症なので、痒みが強く赤みもある場合はステロイドの外用薬を使います。特に手は角質が厚いため、少し強めのステロイドを使うことが多いですね。朝晩2回の使用と併せて保湿も欠かさないように。皮膚の指紋がなくなるほどの炎症を起こしている方は、ステロイドの副作用で皮膚を薄くしてしまうこともあるため、ステロイドは少量に留めて保湿剤をメインで使います。
手荒れがひどい場合、市販薬より、病院で処方してもらう薬を使用した方がいいのでしょうか?
湿疹の症状が強い方は気軽に受診していただきたいと思います。刺激が少なく、保湿力が高いヘパリン類似物質が含まれている保湿剤や、油分の多いワセリンを処方してもらってください。症状が落ち着いて来たら、自分の肌や好みに合った市販の保湿剤を選んでも大丈夫です。また、これまでは手荒れが気にならなかった方でも、最近は消毒剤で刺激を受けているので、普段からお気に入りの保湿剤を塗ることをおすすめします。
皮膚は目に見えるので症状が自分で確認できます。市販の保湿剤を塗っても痒みなどが治らないようなら医者に診てもらうようにしてください。
どのような成分の保湿クリームを選ぶべきですか?
保湿には油分を補うためにもコテっとしたクリームがおすすめです。手の角質は刺激から皮膚を守るよう厚めにできているので薬の成分が浸透しづらく、油分を塗って皮膚を守る必要がありますから。
油分が多いものでいうと、最も一般的なのがワセリンです。ワセリンを塗るとベタつくので、日中の使用に抵抗を感じる方は、就寝前など手を休める時に塗るといいと思います。水を弾くので、水作業をする前にワセリンを塗るだけでも症状を緩和してくれますよ。
サラっとした感触の保湿クリームを好む方は、こまめに塗ってください。ただし、サラっとしたものは傷にしみやすいので、手荒れがひどい方はワセリン、もしくは油性分の多い保湿クリームを使ってください。その際、香料や保存料が多く含まれていると、それ自体が肌を刺激する恐れがあるので注意が必要です。
薬の塗り方で注意すべきことは何でしょうか?
患部やその周辺に、こするように薬を強く塗り込んでしまう人が多くいらっしゃいます。ですが、これでは皮膚に刺激を与えてしまうので、薬は乗せるだけ、軽く押さえるだけで十分です。塗り込まないと不安に思うかも知れませんが、薬の成分は体内に浸透するように作られているので、30分ほど経って表面に残っている成分は洗い流しても効き目に変化はありません。クリームを塗る場合も同様に、患部をこすらないように注意してください。
ちなみに、皮膚がパックリ割れると絆創膏を貼る方もいますが、市販されている粘着力の強い救急絆創膏は、はがす際に肌に刺激を与えるので注意が必要です。どうしてもという場合は、比較的肌にやさしいと言われているアクリル性粘着剤や、シリコーン系粘着剤を使った絆創膏を使用してください。また、フィルム状になっているステロイド薬や、傷を治す薬を重ねて使用することもあるので、症状に合わせて活用するといいと思います。
手洗いや消毒には皮膚の状態に合わせたアイテムを
今年は例年以上に手洗いやアルコール消毒をしている方が多いですよね。手の皮膚に影響はあるのでしょうか?
石鹸で雑菌やウイルスを洗い流すための手洗いや殺菌のためのアルコール消毒は今の時期必要不可欠ですが、当然皮膚に刺激を与えてしまいますので、もともと手荒れに悩んでいる人は傷にしみて大変だと思います。
手を洗う時は界面活性剤が強い石鹸で洗い続けると刺激を受けやすいので、手荒れがある方は刺激の少ない原料の石鹸を選んだ方がいいですね。また、熱いお湯で手を洗うと、熱を放散させようとして水分が奪われ乾燥しやすくなりますから注意してください。熱めのお風呂に入ると痒みが治るという方もいますが、その時は気持ち良くてもそのあと乾燥と痒みが出やすいので保湿や、痒みが強ければ保冷剤を使用したクーリングをお勧めします。症状が酷い時はぬるま湯を使うのも良いと思います。
アルコール消毒剤による手荒れの対処法を教えてください。
アルコールによる手荒れが気になる方は、保湿剤を頻繁に塗ってください。アルコールがしみて痛いという方は、最低限の水洗いだけでもウイルスはある程度落ちるので、水洗いを頻繁にするだけでも効果的ですよ。
ジェルタイプの消毒剤は手にこすり付けるのでどうしても刺激を与えますよね。一方、手に吹き付けるだけのスプレータイプなら刺激は少ないのでしょうか?
ジェルタイプは潤滑剤が含まれるため、擦り込みにくいという利点があるかもしれません。スプレータイプは瞬時に乾くため刺激を感じる時間は短いかもしれません。使いやすく自分にあったものを持ち歩くのも良いかもしれませんね。アルコール消毒剤を使用した後は、保湿剤でさらに手荒れをケアできればベストです。
手洗いに関しては注意するべき点はありますか?
先程もお話しましたが、あまり熱いお湯は使わないこと。そして、界面活性剤の少ないタイプの石鹸を使うことですね。
また、手洗いの後でしっかりと手を拭くことも大切です。その後、できればワセリンや油分の多い保湿クリームを塗っていただきたいですね。残っている水分が蒸発する過程で手肌が乾燥してしまい、アカギレの原因にもなります。特に指の間は水が溜まりやすく、カンジダ菌などの雑菌が増えることで赤くなって皮膚がむけてしまうこともあります。
気になったときにすぐアルコール消毒ができないこともあると思います。その際は手洗いだけでも効果はあるのでしょうか?
基本的には手にウイルスが付着していても、これ口や鼻の周囲を触らなければ体内に入ることはありません。。水でしっかり洗い流せば落ちてしまいますから、ご家庭では手洗いだけでも十分効果があると思います。手洗いは菌を洗い流すもの、アルコール消毒は菌を殺すためのもの。効果は同じです。ただ、感染拡大防止の観点から見ると、外出先ではアルコール消毒を行い、外から店内にウイルスを持ち込まないよう配慮することが大切だと思います。
正しいケアでウイルスも手荒れもしっかり対処
コロナ禍のウイルス対策で手の疾患に悩まされている方が例年以上に多いようです。手は乾燥しやすいので保湿が何よりも大切。そして、手荒れにもさまざまな原因と症状があり、きちんと対処しないと悪化し、長引く可能性もあるので、市販薬で改善しないようなら医師の診断を受けるべきですね。葉山先生、ありがとうございました。
吉祥寺まなみ皮フ科
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-5-10いちご吉祥寺ビル1F
■電車
JR「吉祥寺駅」から徒歩7分
東急井の頭線「吉祥寺駅」から徒歩9分
■バス
武蔵野八幡宮下車目の前