元オリンピック金メダリスト・清水宏保氏が語る「新しい生活様式」の中で運動やスポーツを楽しむ方法とは

元オリンピック金メダリスト・清水宏保氏が語る「新しい生活様式」の中で運動やスポーツを楽しむ方法とは

2020.08.19

新型コロナウイルス感染症対策として私達の日常生活に欠かせない存在になったマスク。今、スポーツをする際のマスクの着け方や外すタイミングなどが話題になっています。日常でのマスク着用で気を付けていることやwithコロナ時代の運動やスポーツの在り方について、1998年長野オリンピックスピードスケート金メダリストであり、介護施設やスポーツジムを経営されている清水宏保氏に伺いました。

厚生労働省からの運動時におけるマスクの着用について注意喚起

厚生労働省は「新しい生活様式」の中で、マスク着用について以下の指針を出しており、マスクをしながら体に強い負荷がかかる作業や運動をすることは避けるように提言しています。

1)マスクの着用について
マスクは飛沫の拡散予防に有効で、「新しい生活様式」でも一人ひとりの方の基本的な感染対策として着用をお願いしています。ただし、マスクを着用していない場合と比べると、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがあります。
したがって、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにしましょう。
マスクを着用する場合には、強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がけましょう。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要です。
外出時は暑い日や時間帯を避け、涼しい服装を心がけましょう。

出典: 「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめました(新型コロナウイルス感染症)|厚生労働省

しかしながら、感染予防と適度な運動を両立させたいと思っている方もいるでしょう。
タマケアLab.編集部では、「新しい生活様式」を守りながらも適度な運動やスポーツを楽しむには、何に気をつけたらよいのか、元オリンピック金メダリストの清水宏保さんに伺いました!

今回お話をしてくださったのは……

今回お話を伺ったのは、元スピードスケート選手であり、長野五輪(98年)で金・銅メダル、さらにソルトレークシティ五輪(02年)で銀メダルを獲得した清水宏保さん。引退後はスポーツジムや介護施設の経営者として多忙な日々を送りながら、北海道千歳リハビリテーション大学客員教授として教鞭を執っています。

清水宏保氏
元スピードスケート選手/ スポーツキャスター/ 長野五輪金メダリスト
3歳からスケートを始める。小さい頃から喘息に苦しむが徹底した治療・管理のもと、スピードスケート短距離界の第一人者として活躍。長野五輪では、500mで金メダル、1000mで銅メダル、ソルトレークシティ五輪でも500mで銀メダルを獲得。ワールドカップ(W杯)通算優勝回数は35回。世界距離別選手権大会500mでは、その当時の世界新記録樹立している。
2010年引退。現在は大学院にて医療経営学を学ぶ傍ら、喘息の啓蒙活動、講演会・イベントへの出演、執筆活動等、文化人として幅広く活躍中。

運動する時もマスクは必要に応じて着用

厚生労働省が提唱する「新しい生活様式」では、熱中症を防ぐため、マスク着用時の強い負荷のかかる作業・運動の回避、屋外で人と2メートル以上離れている時はマスクを外す、などの対策を呼びかけています。コロナ禍において、運動やスポーツと感染対策のバランスに悩んでいる方も多いようですが、清水さんは最近どのようにスポーツを楽しんでいらっしゃいますか?

僕が経営するスポーツジムでウェイトリフティングやエアロバイクでトレーニングをしたり、ゴルフを楽しんだりしていますが、常にマスクは着用してソーシャルディスタンスを保つよう心がけています。さらに、手洗い・うがいをこまめに行うよう心がけていますね。

トレーニングをする時もマスクを着用しているのですね。

はい。僕は北海道札幌市にスポーツジムを2店舗経営しているのですが、スタッフはもちろん、お客様にもマスクの着用をお願いしています。
マスクには着用時呼吸がしづらくなるなどのデメリットはありますが、一方で喉を乾燥から守ってくれるというメリットもあるんです。例えば、夏場にエアコンで空気が乾燥している環境下でトレーニングを続けて激しい呼吸をしたり声を出したりすると喉を痛めやすくなるのですが、マスクをすることで喉を守ってくれるんですよ。

清水さんが経営されているジムでは、マスク着用以外にもコロナ対策を徹底されているのだとか。

トレーニングジム営業再開前に、感染対策として有酸素マシンの間にアクリル板を設置。

出典: https://twitter.com/shimizuhiroyasu/status/1266956833891049472

弊社はセミパーソナル型トレーニングジムなので、1人のトレーナーが応対するお客様は3名ほどに制限されています。大型ジムのように常に満員の状態で稼働しているのではなく、少人数でジムを運営するスタイルなので、元々、密の状態は起こりにくい環境でした。

今では、さらに密を避けるために、排煙窓や出入り口に網戸を新たに設置して常に窓を開けている状態にしています。また、大型のサーキュレーターで空気を循環させ、トレーニングマシンはお客様が使うたびに消毒。マシンだけでなく施設全体も2〜3時間おきに消毒するなどコロナ対策をより徹底していますね。

スポーツジムの他に介護施設も経営されていますが、リハビリやスポーツをするときはどのようにコロナ対策をされていますか?

運動時だけでなく普段からスタッフはもちろん、お客様や来訪される方にもマスク着用をお願いし、ジムと同じように大型のサーキュレーターを常に動かしています。手指消毒もかなり多めの量で行っていますし、お年寄りや体の不自由な方でも利用しやすいように手を当てれば消毒剤が自動的に噴霧される装置を設置していますよ。

ご利用者がリハビリやスポーツを楽しむ時も、もちろん必ずマスクを着用していただいています。そもそも介護施設では感染症予防を徹底することは当たり前。その当たり前を改めてスタッフ全員に喚起することができました。

コロナ禍の練習不足による怪我に注意を

コロナ禍でスポーツ業界には、いつもの場所やメンバー、頻度で練習ができないなどの制約が多くなっているようです。ご自身の現役時と比べてどのような変化があると思いますか?

現役アスリートにとっては普段通りの練習ができないことは肉体的にも精神的にもかなりの負担がかかっていると思います。プロ野球やJリーグの選手は2〜3ヵ月間活動や練習を制限されたなかで開幕を迎えたので、例年通りのトレーニングや準備はできていないのではないでしょうか。その結果、これから試合が重なってくると準備不足の影響で怪我をする、あるいは体調を維持できない選手が今以上に増えてくる懸念がありますよね。

生涯スポーツを楽しむ人や子ども達にとっても、練習不足の影響による怪我が起きやすくなっている可能性がありますね。

そうですね。だからこそ、感染対策も含めてトレーニングの環境整備に取り組んでいくことが大切です。どうすれば感染リスクの少ない環境でしっかりしたトレーニングを無理なく継続していけるかを考えなければなりません。

清水さんご自身が体調管理や体作りで心がけていることはありますか。

出典: https://twitter.com/shimizuhiroyasu/status/1289100059452178433

早起きして人が少ない時間にジムでウエイトトレーニングをし、エアロバイクを1時間漕いでいます。本日も朝5時に起きてジムに通いました。
あと、ゴルフをする時はカートには乗らず歩いてラウンドすることが多いですね。18ホールプレーすると、8〜10キロほど歩くと言われていますが、僕は11キロ以上歩いているのではないでしょうか(笑)。

なるほど!人が少ない時間帯を狙ってトレーニングしたり、意識的に歩いたりされているんですね。

そうですね。あと睡眠も大事です。複数の施設を経営しているので、3〜4時間しか眠れない日が1週間ほど続くこともありますが、そのようなことが続いた後には家から出ずに十分な睡眠時間を取る日を設けるようにしています。可能なら8時間、少なくても6時間は眠るようにしていますね。また、夜ぐっすり眠れなかった日には、どこかのタイミングで仮眠を取るようにも心がけています。

マスクをしながら運動するときはストイックになりすぎないで!

マスク着用で運動する時に注意すべきことはありますか?

マスクをしている時としていない時では運動量に対する呼吸のバランスが明らかに異なります。マスクをしていない時なら無理なくこなせていた運動も、マスクをして行うと息が苦しくなり続けられなくなることがあるんですよ。そのため、マスク着用の場合は運動量を落とす、インターバルを長くするなどの工夫が必要です。

ジムのお客様の中には今までできていたことができなくなってしまうと、無理をしてでも元の自分に戻ろうと必要以上に体に負荷をかけてしまう方が多い。そのため、マスク着用時に無理は禁物であることをスタッフからきちんと説明するよう心がけています。

また、マスクをしていると喉の渇きが感じづらく水分の摂取量が減ってしまいがちなので、いつもよりもこまめな水分補給を心がける必要がありますね。

コロナ禍でのスポーツはいつもだったらできることができなくても、焦らない。落ち込まない。心や時間に余裕を持って楽しむことが大事だと思います。

なるほど!参考になります。ちなみに、コロナ禍で呼吸気系に疾患のある方は不安になることが多いと思います。小さい頃に喘息で苦しまれていた清水さんですが、そのような方々が体づくりをする際に注意すべきことはどのようなことだと思いますか?

喘息患者にとって乾燥した空気や冷たい空気は症状を悪化させることがあるため、体内温度と取り込む空気の温度差をなるべく少なくすることが望ましいんです。そのため、人によってはマスクをすることが体調の安定に役立っているケースもあると思います。

僕は現役時代、吸った息を口の中で温めてから肺に入れるようにしていて、その一連の動作に慣れるのは大変なことでした。マスクを着用すればウイルスをしっかりカットするだけでなく、呼吸時の空気が温まるので肺を安定させてくれることもあるかもしれませんね。

それに、時に健常者よりもウイルスに敏感な喘息患者は、風邪を引きやすい。僕は現役時代からマスクをよく着用していましたが、今でも体調が悪いと感じたら症状が悪化しないように眠る時もマスクを着用しています。

新しい生活様式下における運動やスポーツとの新しい付き合い方とは

運動やスポーツをする環境は今後どのように変化していくとお考えですか。

一度に多くの人が集まり、密状態が避けられないジムを利用していた人は施設選びを考え直す機会かもしれません。同じジムに通うのであってもマスクをこまめに変え、人が比較的少ない時間帯を選び、トレーニングの方法を変えて時間短縮を図るなど、運動を楽しむ方法は色々変化が求められるのではないでしょうか。とはいえ神経質になりすぎてもストレスを感じるので、ご自身が無理なく、楽しく続けられる方法を見つけてください。

マスクをしながら運動やスポーツを楽しむ人にアドバイスをお願いします。

少し専門的なことをお話します。「体脂肪の燃焼」や「健康維持」を目的として運動やスポーツをしている方が多くなってきていますが、一般的に「体脂肪燃焼」に効果的な運動の心拍数は1分間に100〜150で、一般の方は120程度を維持する運動量がちょうどいいと言われています。しかし、コロナ禍でマスクを着用して運動やスポーツを行う時には、通常時(マスクをしていない時)と同じ運動量を続けると心拍数はすぐに150を超えてしまいます。

心拍数を高める運動は、筋力は高まりますが、脂肪燃焼には至りません。

健康的な体作りのために運動やスポーツを楽しみたいのであれば、適切な心拍数の運動を続けることが大切です。マスク着用時は少し物足りないと感じても、運動強度と量を抑えて無理なく続けてみてくださいね。

適切なトレーニングとマスク着用で、運動やスポーツを楽しんで!

コロナ禍中、運動不足で体を動かしたいと考えている人は多いのではないでしょうか。大切なのは、密にならない環境を選び、マスク着用時における適切な運動強度と量をしっかり把握して無理なく続けていくことだと教えていただきました。清水宏保さん、ありがとうございました。

※昨今の事情を考慮しオンラインにてインタビューを行いました

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