【2020年版】新しい生活様式の中、マスク着用における夏の熱中症対策は?

【2020年版】新しい生活様式の中、マスク着用における夏の熱中症対策は?

2020.07.28

環境省と気象庁は7月1日から、関東甲信地方の1都8県で「熱中症警戒アラート」を先行実施しました。新型コロナウイルス感染防止のため発令された「新しい生活様式」の中でマスクは必需品。適切な使用方法が求められる一方で、熱中症対策にも注意が必要です。気温が高くなることでマスクをどのように適切に使っていけばよいか迷う人も多いのではないでしょうか。今回は、熱中症の症状と対処法、そして新型コロナウイルス対策としてマスクを着用する際に、熱中症を起こさないための注意点について伺います。

今回お話をしてくださったのは…

タマケアLab.編集部が伺ったのは、東京メトロ東西線、早稲田駅から徒歩1分の距離にある「夏目坂メディカルクリニック」。一般的な内科疾患から生活習慣病まで幅広くサポートするクリニックで、土日も診療しています。

お話を聞いた栗原隆院長はわかりやすい医療解説が好評で、テレビ出演も多数。SNSでも幅広く健康情報を配信しています。

栗原隆先生
内科医・スポーツドクター
東京医科大学大学院博士課程修了。風邪などの一般的な内科疾患に加えて、スポーツドクターとしての経験を活かし、一般の方たちの健康づくり、体力づくり、ダイエット、ボディメイク、アスリートの診療、筋骨格系の痛みなどについて、幅広く診療しています。

熱中症には3段階のレベルがある

熱中症とはどのような症状でしょうか?

熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで、めまい、けいれん、頭痛などさまざまな症状を起こす病気のことです。

熱中症にはⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と症状によってレベルがあるようですが、レベル別に症状をお聞かせください。

Ⅰ度:現場での応急処置で対応できる軽症
立ちくらみ(脳への血流が瞬間的に不十分になったことで生じる)
筋肉痛、筋肉の硬直(発汗に伴う塩分の不足で生じるこむら返り)
大量の発汗

Ⅱ度:病院への搬送を必要とする中等症
頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感

Ⅲ度:入院して集中治療の必要性のある重症
意識障害、けいれん、手足の運動障害
高体温(体に触ると熱い。いわゆる熱射病、重度の日射病)


一般的なクリニックですと、熱中症で受診される患者さんはⅠ度の患者さんが多いですね。ふらつくとか、気持ちが悪いなどの症状を訴えます。
Ⅱ度の熱中症で病院に搬送された場合は、全身を素早く冷やし、点滴などの処置を行います。

Ⅲ度の熱中症になると、体の中はどうなるのでしょうか。

人間の体は、深部体温が40度以上になると、血流が滞り、細胞の動きが止まり、脳が侵される危険が出てきます。そこまで悪化しないよう一刻を争って、体温を下げるために氷水をはった浴槽に患者を入れるという処置を行った症例もあります。

熱中症がどのレベルの症状なのか、自分で判断するのは難しいと思うのですが。

水分を自力で補給できるかどうかが一つの目安です。ぐったりとして、自力で水分補給できないような場合はためらわずに救急車を呼んでください。熱中症は急速に進行します。Ⅱ度から分単位でⅢ度に悪化する場合もあり、あっという間に死に至る危険性もあるのです。

ご高齢の方が熱中症にかかりやすいのはなぜでしょうか?

ご高齢の方は代謝機能が落ちて、汗をかきにくい体質になっているためです。また、調節機能や察知機能が低下し、体が熱や喉の乾きを感じにくくなっているので、何となくだるい、気持ち悪いと感じて体を触ってみたら熱かった、という方が多いですね。

小さなお子さんを熱中症から守るためには、どのような注意が必要でしょうか?

特に注意して欲しいのはプールや水遊びをしている時ですね。水に触れていると汗をたくさんかいていることに気付かず、脱水症状を起こしやすくなります。涼しくて、気持ちよく遊んでいる間も頭は太陽に照らされて熱くなり、汗を流して水分も失われているので、知らぬ間に熱中症にかかっていることがあります。こまめに休憩を取り、水分補給を心がけてください。

熱中症になりやすい職業はありますか?

建築現場など屋外で働いている方は熱中症のリスクが高いため扇風機内蔵の服を着るなど、十分に対策を取っているようです。一方で、大きな倉庫での荷物の運搬など、室内で運動量の多い仕事をしている方も熱中症になりやすいという報道もあります。また、意外と注意が必要なのがオフィスワーカーです。オフィスワーカーは安全だと思われがちですが、実は熱中症を引き起こす脱水状態の人が意外と多いのです。足のむくみを訴える女性なども〝隠れ脱水症〟の疑いがあります。こまめな水分補給が大事ですね。

熱中症予防対策は冷却と水分補給。そして体づくり

熱中症の予防対策はどうすれば良いのでしょうか?

こまめな水分補給、そして体を冷やすことです。手のひらや足裏を冷やすことも効果的です。手のひらや足裏は動脈や静脈が交わっているので冷却効果が非常に高い箇所です。「少しだるい」と感じるくらいであれば、手のひらや足裏を冷やすことで落ち着く場合もあります。市販の保冷剤などを握るのもいいですね。水筒やペットボトルなどの冷たいものを手に持っているだけでも体温を下げる効果は期待できます。
熱中症を発症してしまったら、脇の下、首筋、太腿の付け根など太い血管の通っている箇所を冷やすと効果的に体温を下げることができます。

市販されている冷却スプレーやシートは熱中症対策に効果的なのでしょうか?

出典: シャツひえスプレー100mL | タマガワエーザイ

主成分がエタノールのスプレーはアルコールが蒸発する時の気化熱で噴霧した箇所を冷やしてくれます。冷却シートは、就寝時や運動の後、氷枕や氷嚢の代わりとして使用することができるので便利です。

熱中症を予防するためには水分をどのくらいとるべきですか?

水を1日に1.5リットル飲むとしたら、3分の1の500ミリリットルくらいはスポーツドリンクにすると熱中症やむくみ予防により効果的です。糖分が気になる方は糖質オフで、電解質を含んだドリンクが良いでしょう。

1日に1.5リットルの水分を補給するのはなかなか大変です。

確かに大変ですよね。でも、日本の夏は年々暑くなっているので、水分補給をしっかりと意識するべきです。対策を取らないと、「何となくだるい」「やる気が起きない」「足がむくむ」などの症状を感じることが多くなり、軽い脱水症になっている可能性もあります。

熱中症対策として水分を補給するための持ち歩き方法や飲むタイミングは?

水筒に氷と水や麦茶などを入れて持ち歩き、少しずつ飲んでください。プラスしてスポーツドリンクを補うといいと思います。

最近、常温の飲み物を好む方も増えていますが、やはり冷たい方がいいのでしょうか。

熱中症対策のためには冷えた飲み物の方がいいですね。お腹を壊しやすい方や胃に負担をかけたくない方は常温の飲み物でもいいと思います。

熱中症になりづらい体質にするために効果的な方法は?

暑熱順化(しょねつじゅんか)といい、暑さに対して徐々に体を順応させることが大切です。厚生労働省も発表していますが、毎日30分、暑さがさほど厳しくない朝方や夕方にややきつめの運動をすると体が暑さに慣れていきます。ジョギングやウォーキングなどでもいいでしょう。スポーツ選手も暑い土地で試合がある時は、事前に体を暑さに順化させるトレーニングを取り入れています。それに加えて肉や魚などの主食をしっかり食べてタンパク質を補うことも大切です。
そういう点では、時差通勤はおすすめです。早めに帰宅して夕方、散歩して軽く運動する生活は熱中症対策には効果的です。そして美味しく夕飯を食べて、早めに眠る。健康的な生活が今まで以上に重要だと思います。

マスク着用時は、水分補給とこまめな休息をしっかりと

今年の夏はマスク着用で過ごすことが多くなりそうです。夏場のマスク着用は、体にどんな影響を与えるのでしょうか?

マスクを着用していると口から水分が抜けづらくなり、喉の乾きを自覚しにくくなります。マスクをしていると水分も補給しづらいため脱水症状を起こしやすいですね。また、マスクの内側に溜まった呼気によって体温が上昇し、熱中症にかかりやすくなります。
熱中症で当クリニックを受診する人は全身のダルさを訴えることが多いのですが、マスク着用の影響で熱中症にかかった人は頭に熱がこもっているので、発熱だと思っている人も多いです。

高温多湿環境でのマスク着用には、どんな注意をすれば良いですか?

夏場は電車内で熱中症になり救急搬送される患者さんが急増します。今年はマスクを着用して乗車するので、さらなる注意が必要です。遠距離通勤・通学のため混雑で熱がこもっている車内に長時間いる方は、できれば途中で休憩を取って欲しいですね。理想的には30分に1度、5分でもいいので椅子に座って、水分補給などしてもらえればと思います。もちろん、ただでさえ忙しい朝の時間帯において頻繁に途中下車するのは現実的ではないと思いますが、コロナ禍で迎える初めての夏だからこそ、いつもより時間に余裕をもって出勤してみてはいかがでしょうか。

オフィスや教室、自宅など、室内で気を付けることは?

厚生労働省も発表しているように室内ではエアコンを動かしてしっかりと冷房することが大切です。その際、室内を閉め切るとウイルスを拡散させる危険があるので換気を心がけてください。厚生労働省では30分に1回以上、数分間程度、窓を全開することを推奨しています。

屋外でもマスクは常に着用していた方がいいのでしょうか?

難しい問題ですよね。感染が疑われる方、咳やくしゃみが出る方は当然マスクをする必要があります。 ただ、気温や湿度が高い中でマスクを長時間着用していると熱中症にかかってしまうこともありますので、厚生労働省も発表していますが、散歩や公園での運動など、人との距離が十分に保てる場合はマスクを外した方がいいと思います。しかし、暑い時間帯に外出するとマスクを外していても熱中症になりやすいので、暑さのピーク時の外出はできるだけ避けてください。

2メートルのソーシャルディスタンスを保てない場合はどうすれば良いのでしょうか?

唾液が飛ぶ距離で会話をする場合は必ずマスクをしてください。周囲に付着した唾液にウイルスが含まれている可能性もあるので、周囲の備品、手で触りがちな箇所をアルコール消毒するよう心がけてください。人が集まる場所ではマスク着用を心がけていただきたいです。マスクを着用することで、手指で口や鼻を触らなくなるというメリットもあります。

熱中症になってしまったら?

軽度の熱中症になったかも知れないと感じた時の適切な行動を教えてください。

まず、保冷剤を使って手のひらや足裏を冷やしてください。それで改善されないようなら、脇の下、首筋、太腿の付け根を冷やしてください。全身を水で濡らしてからクーラーや扇風機などの風に当たって水を蒸発させ、その気化熱で体を冷やすのも効果的です。炎天下を走るマラソンランナーも同じ原理で頭や体に水をかけています。

救急車を呼ばなければいけないような状況になった場合の応急処置は?

救急車が到着するまで、氷や水でとにかく体を冷やし続けてください。氷風呂が最も効果的ですがご家庭では水風呂やシャワーでも良いでしょう。水分が失われているので、飲めるようでしたら水分を飲ませてください。電解質を補うため、冷えた経口補水液やスポーツドリンクがより効果的です。

熱中症対策は、生活習慣を見直す良い機会

新型コロナウイルスの対策を行いながらの熱中症対策。今年の夏は例年以上に体調管理と健康維持に注意が必要です。栗原先生がおっしゃる通り、生活習慣を見直す良い機会と考えて前向きに毎日を過ごしたいですね。栗原先生、ありがとうございました。

夏目坂メディカルクリニック

東京都新宿区喜久井町4-1新宿印刷会館4階 TEL : 03-6457-6572

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